砂栽培に興味を持たれた方は、具体的にどのように進めていけばいいのかわからず、お困りではありませんか。
そこでこの記事では、砂栽培の導入の流れを3つのステップにわけて解説していきます。
STEP 1 事前準備~砂栽培の導入前に確認すべきこと
STEP 2 環境整備~導入予定地にあらかじめ整えておくべきこと
STEP 3 建設工事~ビニールハウスや高設ベッドなどの設備導入時のポイント
この記事を読めば、砂栽培導入の具体的な流れがイメージできるようになります。
1. 砂栽培の導入の全体像を3つのステップで解説
砂栽培導入のおおまかな流れは次のとおりです。
STEP 1【事前準備編】・・・砂栽培の導入前に確認しておくべきことを整理します。
STEP 2【環境整備編】・・・農地やインフラの整備など導入予定地に整えておくべき環境の整備を行います。
STEP 3【建設工事編】・・・ビニールハウスの建設、高設ベッドの設置などメイン設備を導入します。
では、次の章から各ステップごとの具体的な流れを説明していきましょう。
2. 砂栽培導入の具体的ステップ1~【事前準備編】
この章では、砂栽培導入前の事前準備について説明します。
事前準備をしっかりすることは、理想的な砂栽培システムを導入する第一歩です。
大きな投資になりますので、必要なことはもれなく検討しておきましょう。
この章を読むことで、導入前に確認しておくべきことが整理できます。
2-1. 砂栽培が導入可能か、5つの項目で確認する
まず、砂栽培が導入可能か、適した場所かを確認します。
確認事項は主に次の5つです。
(1)近隣の承諾が得られるか
(2)日当たりは良いか
(3)水はけは良いか
(4)接道しているか
(5)上空に太い電線などはないか(積雪地域の場合)
では、一つずつ説明します。
(1)近隣の承諾が得られるか
ビニールハウスを建てることに、近隣の承諾を得ておきましょう。
ビニールハウスを建てると近隣の農地に影ができます。
豪雨になれば水が滝のように流れ落ちて、近隣農地へと流れていきます。
工事の最中もトラックや作業員がご迷惑をおかけすることもあります。
あとあとトラブルにならないためにも、事前に承諾を得ておきましょう。
(2)日当たりは良いか
ビニールハウスにしっかり日が当たるか確認しましょう。
特に午前中の日当たりが光合成にとって最重要です。
日光が遮られると生育に支障があります。
特に冬は影になりやすいので、年間を通じて日当たりが良いか確認しましょう。
(3)水はけは良いか
水はけが良いか確認しましょう。
ビニールハウスの中は雨が降らないので、大丈夫と思われるかもせ入れません。
しかし、蒸発もしにくいので、水たまりができるとなかなか消えません。
周囲が水田だと田植えの時期は水に浸かりやすくなります。
また集中豪雨や台風の際は、まわりから水が入り込みます。
水たまりがいつまでも消えないと、ハウス内の衛生環境もよくありません。
雑菌が発生しやすくなるからです。
年間を通じて水はけが良いか確認しましょう。
【参考】平成30年7月の豪雨でも作物の被害はゼロでした
![平成30年7月近畿地方を中心とした記録的豪雨による浸水](https://no-chi.com/wp-content/uploads/2019/06/5710d3d3432bf50780072aaebde976af-logo.jpg)
平成30年7月近畿地方を中心とした記録的豪雨による浸水でも被害ゼロ
農地コンシェルジュのある奈良県でも、平成30年7月の集中豪雨は相当なものでした。
しかし、高設ベッドの上の作物への被害はゼロでした。
とはいえ、水がひくまでは作業が困難でしたので、水はけが良いに越したことはありません。
(4)接道しているか
できれば接道している方が良いです。
理由は、主に次の4つです。
・工事の際、ビニールハウスや高設ベッドの部材を運び込みやすい
・特に、砂の搬入においては、トラックが直付けできるか否かは大きな違いがある
・道があれば電柱が立っていることが多いので、電気を引き込みやすい
・収穫後の出荷がしやすい
工事中の利便性については一過性のものなので、接道していなくても工夫すれば何とかなります。
しかし、出荷に際しての利便性は重要です。
なぜなら、リレー栽培でおこなう場合、ほぼ毎日出荷するからです。
日々の出荷作業で軽トラを横付けできるかどうかは、コスト的に大きな差がうまれます。
できれば接道している農地に導入しましょう。
(5)上空に太い電線などはないか(積雪地域の場合)
上空に高圧線などの電線が無いか確認しましょう。
なぜなら積もった雪が落下するリスクがあるからです。
積雪地域では電線にも高く雪が積もります。
それが固まって落ちると、下のビニールハウスにダメージを与えます。
特に高圧線などの太い電線は要注意です。
何十メートルもの高さから、雪の塊がビニールハウスを直撃するからです。
ビニールに穴が開くか、ひどい時は損壊するかもしれません。
できれば太い電線の下は避けた方が良いでしょう。
農地を探していて信号機が縦になっているのを見かけたら、そこは雪が積もりやすい地域です。
その地域にビニールハウスを建てる際は、積雪対策にも十分ご注意ください。
※ビニールハウスの耐雪性について知りたい方は、次の記事を参照ください。
2-2. 栽培作物と設備の規模、予算を決定
農地の目途がたったら、栽培作物と設備の規模、そして予算を決定しましょう。
(1)栽培する作物を決定する
まず、栽培する作物を決定しましょう。
その際、砂栽培に初めて挑戦される方は、栽培経験のある作物を選ぶのが無難です。
なぜなら栽培方法も栽培作物も未経験だと、うまくいかないときに何が原因かわからなくなるからです。
参考に、農地コンシェルジュで実績のある作物をご紹介します。
葉物野菜
リーフレタス、サニーレタス、ベビーリーフ、ほうれん草、小松菜、サラダ菜、水菜、チンゲンサイ、パセリ、パクチー、バジル、クレソン、ケール、コリアンダー、小ねぎ、シャンパオ
実野菜
ミニトマト、トマト、オクラ
砂栽培に不向きな作物
・砂栽培は水がすぐ流れ出るので、泥質土壌で育つお米や里芋は不向きです。
・高設ベッドは培地が浅いため(10cm程度)、深く根を張る根菜類も不向きです。
【農地コンシェルジュが「リーフレタス」を選んだ理由】
農地コンシェルジュは「リーフレタス」を選びました。
その理由は「回転数」にあります。
トマトは確かに単価は高いですが、年に何回も植えるわけではありません。
収益が得られる時期は限られています。
設備が遊んでしまう期間もできてしまいます。
初期費用が高額なだけに、遊休期間はできるだけ少なくしたいところです。
その点「リーフレタス」は『年8.6回転』の実績があり、常に設備がフル回転しています。
そのため初期費用を早期に回収できるのです。
これが農地コンシェルジュが「リーフレタス」を選んだ理由です。
(2)設備の規模を決定する
設備の規模を考える上で最も重要な予算(初期費用)の目安は、農地一反分の全設備で約1,800万円です。
もちろん既にビニールハウスをお持ちであれば、その分安くなります。
灌水装置や井戸があれば、それらも活用できます。
ですので、あくまで概算とお考え下さい。
広さを考えるにあたっては、ビニールハウスは農地に目一杯建てることができないことを注意しておきましょう。
面積比率でいうと、農地に対してビニールハウスの面積は7割程度、高設ベッドの培地面積は5割程度になります。
さらに、作物や栽培スタイルによっても高設ベッドの幅や高さ、通路の幅が変わってきます。
高設ベッドの検討ポイントは次の通りです。
(1)密集して植えられる作物であれば、ベッドの幅を広くしてたくさん植える方が効率が良いです。
(2)日当たりや風通しが重要な作物であれば、株の間隔を広くとる必要があります。
そのためベッドの幅を狭くし、その分ベッドの本数を増やすことでたくさん植えることができます。
(3)誘引が必要な作物の場合は、棒やヒモを設置する方法を設計段階で考えておく必要があります。
(4)障害者の方が車イスで作業される場合は、通路幅も十分確保しましょう。
車イスに座りながら真ん中まで手が届くよう、ベッドの高さにも配慮が必要です。
このように「予算や農地の大きさからのアプローチ」と「栽培スタイルからのアプローチ」の両面から検討し、自分にとってベストな規模を見つけましょう。
なお、砂栽培の初期費用について詳しく知りたい方は、下記の記事を参照ください。
2-3. 導入費用の見積りを比較して検討する
ビニールハウスや高設ベッドなどの大枠が決まりましたら、見積りを依頼して比較検討します。
ビニールハウスは農業用の一般的なものを使うので、農業資材の業者に依頼します。
高設ベッドについては、イチゴの架台設計の経験のある業者が良いでしょう。
依頼の際は「水を含んだ砂の重量」まで考慮した強度計算ができるかを確認しましょう。
最も重い砂が最上部に位置する構造なので、地震に対しても十分考慮した設計にしてもらいましょう。
その他の周辺設備についても、農業用の資材業者で揃います。
ただ、砂については、建設土木関係の業者に見積りを依頼します。
なぜなら、砂はコンクリートに混ぜて使うための「建材」だからです。
少量であれば自分で調達することもできますが、砂栽培で使用する場合は調達のことも考えると、業者に依頼すべきです。
詳しい理由は下記を参照ください。
砂栽培の初期費用の全て|2-3. 砂は種類があり立米単価10,000円/㎥|ただし運搬費に注意
2-4. 融資申込&契約
見積りが揃い、具体的な金額が見えてきたら契約&発注の段取りになります。
お手元の現金で導入されるのであれば、契約すればすぐに次のステップに進みます。
融資を利用される場合は、契約の際に停止条件をつけておきましょう。
これにより、もし融資がおりなかった場合に、契約を取り消すことができるからです。
新規就農の方には次のような補助金もありますのでぜひご参考にしてください。
3. 砂栽培導入の具体的ステップ2~環境整備編
この章では、設備を導入する前にしておくべき環境整備について説明します。
砂栽培の設備を導入する前には、農地やインフラの整備が必要です。
これを怠ると、後になって大幅な変更や工期の遅れが生じます。
追加出費が必要になることもあります。
この章を読むことで、設備をスムーズに導入させるために、どのように環境整備をしておけばよいかがわかります。
3-1. まず草刈り~雑草を根絶させるつもりで
農地整備でまず第一にすべきことは、草刈りです。
しかも、いつものような高刈りではだめです。
雑草を根絶させるつもりで徹底的に刈りましょう。
後から防草シートを張るのでこれが最後の草刈りだと思って、徹底的に雑草を取り除きましょう。
また起伏が激しいようであればトラクターでならします。
業者にお願いして重機で地ならししてもらえるなら、ぜひ活用しましょう。
3-2. 水確保~必要なら井戸掘り|無理なら水道水
井戸があるならそのまま活用しましょう。
ただし、水量を確認し、少ないようなら貯水タンクと併用しましょう。
作物にもよりますが、夏場で1日に1反あたり1㎥使うこともあります。
現在井戸がなくても、地下水が期待できる地域であれば井戸を掘ることも選択肢の一つです。
もし無理なら、水道をひくことになります。
ただし、コストはかかります。
3-3. 排水関係を整える
水はけの悪い土地だと水たまりできやすいので、注意が必要です。
ハウス内は乾燥しにくいので、水はけが悪いと常時ぬかるむことになります。
U字溝をきるなどして排水環境を整えておきましょう。
3-4. 電気工事|早めに電力会社に相談
砂栽培にとって、電気は必須です。
換気扇や灌水装置などに使用します。
接道してるなら近くに電柱があることが多いのですぐに引けます。
そうでないなら電柱を建ててもらわなければなりません。
時間がかかりますので、早めに地域の電力会社に相談しましょう。
4. 砂栽培導入の具体的ステップ3~建設工事
この章では、ビニールハウスや高設ベッドなどの工事について説明します。
いよいよメインの設備の工事に入ります。
大掛かりな設備なので慎重に進めるたいところです。
この章を読むことで、出来上がるまでの様子がわかります。
4-1. ビニールハウスの建設
まず、ビニールハウスの建設がはじまります。
3連棟の大きなものであれば、作業員数にもよりますが2週間から1ヶ月近くかかります。
自作も可能ですが、初めて建てる場合はあまりお勧めしません。
なぜなら、ビニールハウスは構造が簡単な分、施工品質に寿命に大きく影響するからです。
ビニールハウスの工事品質が不十分な場合に発生する8つの大きなリスク
(1)基礎工事が不十分だと、パイプが沈みハウスがゆがむ
(2)換気扇を回しても隙間から風が入りこみ十分に換気できない
(3)隙間から虫や雑草の種が飛んでくる
(4)ビニールにたるみがあるとそこから露がおちて、下の野菜が病気になる
(しずくには雑菌がいっぱい)
(5)台風時、強度のムラがあるとそこから歪んで倒壊する
(6)台風時、下から風が入り込み飛ばされる
(7)積雪時、設計時の強度計算どおりにならず倒壊する
(8)積雪時、ビニールのたるみがあると引っかかって雪が滑り落ちない
このような施工不良を回避するためには施工業者とよく話し合い、できれば次のことを確認しましょう。
ビニールハウスの施工品質をバッチリ仕上げるために業者に確認しておくべき8つのポイント
(1)農地の状況(地盤の固さや水はけなど)を把握しているか
(農地で気になる箇所があればきちんと伝えておく)
(2)パイプが土中にしっかり差し込まれているか
(3)アーチパイプは歪みなく並んでいるか
(4)金具がきちんと締められているか
(5)扉を閉めたとき隙間なくピシッと閉まるか
(6)ビニールにシワやたるみはないか
(7)巻き上げ機はタルミなく巻けるか
(8)換気扇を回したとき隙間から風が入り込んでないか
(特に下側から風が入り込んでいないか)
施工品質について詳しく知りたい方は、次の記事でまとめていますので参考にしてください。
ビニールハウスの価格の相場|2-11.【運搬・施工費】施工品質を確保するためには施工費をある程度みておく
4-2. 高設ベッドの設置
続いて高設ベッドの設置です。
水平を保ちながら組み立てていきます。
傾いていると灌水チューブの所々で水の出具合に差が出てしまいます。
4-3. 砂搬入
砂を搬入します。
出来るだけ水平になるよう均します。
砂の厚さに差があると、作物の育成にも偏りがでてしまいます。
4-4. 灌水装置などの周辺設備
最後に周辺設備の導入です。
3章の環境整備編であげた事項を事前に整えておけば、スムーズに進むはずです。
(参照|3. 砂栽培導入の具体的ステップ2~環境整備編)
後回しにしている事項があれば、ここで戸惑うことになります。
追加費用が発生するかもしれません。
これらのステップをクリアすれば、これで砂栽培システムの完成です。
![砂栽培](https://no-chi.com/wp-content/uploads/2019/12/sunasaibai-1-1.jpg)
砂栽培システムの完成です!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事では、次のことを説明しました。
STEP 1 事前準備~砂栽培の導入前に確認すべきこと
STEP 2 環境整備~導入予定地にあらかじめ整えておくべきこと
STEP 3 建設工事~ビニールハウスや高設ベッドなどの設備導入時のポイント
砂栽培の導入までの流れがイメージできましたでしょうか。
砂栽培にご興味を持った方は、砂栽培の施設の見学をしてみませんか?
砂栽培設備の導入をご検討中の方は、記事の下にあるお申し込みフォームから、ぜひ私たち農地コンシェルジュの奈良県の現場をご見学ください。
きっと新しい農業スタイルが見つかることでしょう。
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