はじめての農地転用の許可と届出|申請要件と審査基準を農地区分別に解説

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農地転用をお考えの方は、次のようなことがわからずお困りではありませんか?

・農地転用はどのような手続きをとれば許可されるのか
・農地転用はどのような基準で許可されるのか
・農地転用の許可証はどうすれば発行されるのか
・農地転用の許可が不要なケースにはどういったものがあるか

農地転用は農地法で規制されています。
違反した場合には厳しい罰則規定もあります。
お困りになるのももっともです。

そこでこの記事では、今まで100件以上の農地転用を手続きしてきた私たち農地コンシェルジュが、農地転用許可制度の概要とおさえるべきポイントを詳しくご説明します。

この記事を読むと次のことがわかるようになります。

・農地転用許可制度の概要
・農地区分の調べ方と転用可能かの目安をつける方法
・農地転用の申請手続き
・転用許可が不要なケース
・違反した場合の罰則規定
・ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)による農地の一時転用

最後まで読めば農地転用についての具体的な検討ができるようになります。

あなたの大切な農地を有効活用する手助けになれば幸いです。

 

1.  農地転用は許可または届出が必要です

この章では、農地転用許可制度の概要をご説明します。

農地転用は、誰でも自由にできるわけではなく原則として「許可」が必要です。
農地の区分によっては申請しても「許可」が出ないこともあります。

また市街化区域内では、届出し受理されれば農地転用可能(許可が不要)です。

この章を読むことで、農地転用の許可の仕組みと農地区分の関係などが理解できます。

1-1. 農地転用は原則として許可が必要|農地転用とは区分を変更すること

「農地転用」とは、地目が「田」や「畑」の農地を目的別の観点から「雑種地」等に転用することをいいます。
具体的には、農地を住宅や工場等の建物、資材置場、駐車場、太陽光発電設備等の用地に変更することがあげられます。

原則として、都道府県知事や指定市町村(※)の長への「許可申請」となります。

「許可申請」ですので、審査を受けて許可されなければ転用できません。

ただ、市街化区域内の農地は、積極的に市街化を進めたいことから届出・受理されるだけで農地転用ができます。

(※)指定市町村とは
農地転用許可制度を適正に運用し、優良農地を確保する目標をたてるなどの要件を満たしているものとして、農林水産大臣が指定する市町村をいいます。
農地転用に関して都道府県と同様の権限を持っています。

1-2. 第2種、3種農地なら農地転用が可能|農振地でも可能性あり

第2種農地、第3種農地なら農地転用が可能です。

一方、それ以外の農地は原則として農地転用できません。

それは次のような考え方に基づいています。

・農業に適した生産性の高い農地は、農業用地として保護し、振興していく
・市街化地域にある農地は、有効活用する選択肢を持たせる

この点につき、農林水産省HPにとてもわかりやすい資料がありますのでご紹介します。

農地転用許可制度の概要

画像引用元:農林水産省 農地転用許可制度ページ内 PDF資料「農地転用許可制度の概要」

資料にもあるように農地の種類は次の5つにわけられます。

・農用地区域内農地
・甲種農地
・第1種農地
・第2種農地
・第3種農地

一つずつ説明します。

農用地区域内農地(原則農業以外使用不可)

農用地区域内農地は、原則、農業以外には使用はできず、農地転用ができません(※)。

なぜなら、生産性の高い優良農地という取扱になっているからです。

農用地区域内農地とは、「市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地」のことをいいます。

(※)ただし、農振除外申請をした結果、2種農地あるいは3種農地となった場合は、農地転用が可能です。

 

甲種農地(原則農業以外使用不可)

甲種農地は、農業以外には使用できず、農地転用ができません。

甲種農地とは、「市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等、特に良好な営農条件を備えている農地」のことをいいます。

第1種農地(原則農業以外使用不可)

第1種農地とは、「10ヘクタール以上の規模の一団の農地、土地改良事業の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地」のことをいいます。
基本的に農業以外には使用できず、農地転用ができません。

第2種農地(条件が満たされれば農地転用可能な農地)

鉄道の駅が500m以内にある等、市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地です。
周辺に代替地がない等の要件が満たされれば農地転用が可能な農地です。

第3種農地(原則農地転用可能)

鉄道の駅が300m以内にある等、市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地です。
農地転用が可能な農地です。

1-3. 所有している農地の区分を調べる方法

では、所有している農地の区分を調べる方法を説明します。

STEP1. 土地の登記簿謄本(※)や公図(※)、航空写真などを準備する
(※いずれも法務局で入手できます。)
STEP2. 各市町村の「農業委員会」や「農政課」に電話をして自分が所有している農地の種類を問い合わせる
STEP3. アポイントを取って実際に担当課へ行く

各ステップについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

 

2. 農地転用に必要な書類と手続きの流れ4パターン|4条申請・5条申請・許可・届出

この章では農地転用の申請方法についてご説明します。

申請方法は、農地転用後に売却するかしないか、所在地が市街化区域「内」か「外」かによって異なります。
また農地法は、実務面でローカルルールがとても多い法律です。
地域や農業委員会の担当者によって求められる書類や手続きが異なる場合があります。

では、一つずつ確認しながら進めましょう。

2-1. 農地転用後も所有するなら4条申請、転用して売却するなら5条申請

農地転用には2通りあります。
農地の権利移動があるかないか、つまり農地転用後に売却するかしないかで区別されます。

根拠となる農地法の条項から、それぞれ「4条申請」「5条申請」と呼ばれています。

申請する人や許可を出す人は次の通りです。

項目 持ち続ける(4条申請) 売却する(5条申請)
土地の権利の移動 なし(自ら使用あるいは貸借) あり(農地転用後売却)
許可申請をする人 農地を転用する人 転用する農地の譲渡人と譲受人
許可権者 都道府県知事 または 市町村長(※)

(※)農地転用の面積が4haを超える場合、あらかじめ農林水産大臣が協議することとされています。

 

2-2. 「許可申請」か「届出」かで必要書類と手続きが異なる

農地の場所が「市街化区域外」か「市街化区域内」かで、手続きの大まかな流れが次のように異なります。

農地の場所 手続きのおおまかな流れ
市街化区域外 【許可申請】
農業委員会が受理したのち、都道府県知事・指定市町村長が許可
市街化区域内 【届出】
農業委員会へ届けて受理されればOK(許可を得る必要はない)

※ 市街化区域とは

市街化区域とは「すでに市街地としてできあがっている区域で約10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」です。

つまり、市街化区域内は積極的に市街化を進めたい地域です。
そのため、届出・受理されるだけで農地転用ができます。

 

では、それぞれの手続の流れを具体的に説明します。

【許可申請】:「市街化区域外」の農地転用許可手続きの流れと必要な書類

市街化区域外の農地転用許可手続きの流れは次の通りです。

 

市街化区域外の農地転用の手続きの流れ

 

※農地が30aを超えると意見聴取のプロセスが増えますが、申請者にとっては同じ手続きとなります。

この申請書と添付書類をセットにして、転用しようとする農地のある市町村の農業委員会に提出します。

参考に、実際に提出した申請書の見本をご紹介します。

 

農地転用申請書

申請書は、各市町村のホームページや農業委員会にて入手できます。

添付書類の主なものは、次の通りです。

(1)登記事項証明書、定款 (法人のみ)
(2)土地の地図と登記事項証明書 (全部事項証明書)
(3)土地に設置を予定している建物や施設の図面
(4)残高証明書、融資証明書 (資金力、信用力を示せるもの)
(5)農地転用に関係する地権者方々の同意書 (後からもめることのないよう事前に同意を得ておく)
(6)土地改良区の意見書 (土地改良区域内の場合のみ)
(7)その他参考となる書類 (例えば事業計画書、地籍図、土地利用計画図、全景写真など)

ただ、各農業委員会は必要に応じて、他にも添付書類を定めています。

必ず直接問い合わせて必要となる書類を確認してください。

 

【届出】:「市街化区域内」の農地転用許可手続きの流れと必要な書類

市街化区域内の農地転用届出手続きの流れは次の通りです。

 

市街化区域内の農地転用の手続きの流れ

 

市街化区域内の農地を転用する場合は、農地のある市町村の農業委員会に必要な書類を「届出」し「受理」されればOKです。

申請書は、各市町村のホームページや農業委員会にて入手できます。

添付書類の主なものは、次の通りです。

(1)土地の地図と登記事項証明書 (全部事項証明書)
(2)賃借権が設定されている場合、解約できることを示せる書面
(3)開発許可(都市計画法第29条)が必要な場合、その許可を受けたことを示せる書面(5条申請のみ)

こちらも同じく各農業委員会が必要に応じて、他にも添付書類を定めています。

必ず直接問い合わせて必要となる書類を確認してください。

 

2-3. 農地転用の許可は「立地基準」と「一般基準」で判断される

農地転用を許可するかどうかの判断基準を許可要件といいます。

その許可要件には「立地基準」と「一般基準」の2つがあります。

基準 内容 具体的判断基準
立地基準 農地区分に応じて判断 ・第2種、3種農地なら転用可
・上記以外は原則としてNG
詳しくはこちらを参照「1-2. 第2種、3種農地なら農地転用が可能|農振地でも可能性あり
一般基準 一般基準転用の確実性、周辺農地へ影響度合いで判断 ・転用後、申請した用途どおりに使用しているか
・まわりの農地の営農に支障がないか(土砂の流出や排水など)
・仮設置などの一時転用の場合は原状復旧が可能か

 

2-4. 農地転用の許可申請から許可証(受理通知書)が発行されるまでおおよそ2~3ヶ月

農地転用の申請を出してから許可証(受理通知書)が発行されるまで、おおよそ2~3ヶ月かかります。

審査は通常月1回行われ、申請には締め切りが設定されています。
そのため、締め切りに間に合わなければ1ヶ月先送りになります。

各市町村によって締め切りを個別に設定していますので、必ず農地のある農業委員会に確認してください。

(※ちなみに『農地コンシェルジュ』のある奈良市の農業委員会の農地転用申請の受付は毎月25日~月末となっています。)

農地転用の許可証の見本

参考に、農地転用の許可証の見本をご紹介します。
(許可証には申請時の提出書類がすべて含まれているため分厚くなっています。)

農地転用許可証の実物

農地転用許可証の実物

 

また、次のような標識も、許可証の発行されるタイミングにあわせてもらえます。

農地転用許可の標識

農地転用許可の標識

【注意】農地転用許可証は再発行不可!
農地転用の許可がおりると許可証が発行されます。
この許可証は再発行されません。
絶対、紛失しないようご注意ください。

 

3. 農地転用の許可が不要なケース

この章では、農地転用の許可が不要なケースをご説明します。

農地転用の「届出」だけで済むケースと、申請そのものが不要なケースがあります。

後者は行政が主導となるものですから、参考程度にしておいてください。

3-1. 「届出」だけで農地転用できるケース

市街化区域内の農地を転用する場合は「届出」だけで構いません。

「許可」を得る必要はありませんので、要件を満たしていれば転用可能です。

農業委員会に必要な書類を届出して、受理通知を受け取ればOKです。

 

3-2. 行政が主導となるため農地転用の申請が不要なケース

次のようなケースは申請そのものが不要です。

(1)国・都道府県・指定市町村が転用する場合
(2)土地収用(※1)される場合
(3)農業経営基盤強化促進法によって転用する場合
(4)市町村(指定市町村(※2)を除く)が土地収用法対象事業のために転用する場合

行政が主導となるものです。
参考程度にしておいてください。

(※1) 土地収用とは
特定の公共事業を進めるにあたって必要な土地があった場合、国や地方公共団体が法律に従って所有権や使用権を強制的に買い上げることいいます。

(※2) 指定市町村とは
農地転用許可制度を適正に運用し、優良農地を確保する目標をたてるなどの要件を満たしているものとして、農林水産大臣が指定する市町村をいいます。
農地転用に関して都道府県と同様の権限を持っています。

 

4. 許可を受けずに農地転用すると厳しい罰則規定あり

許可を受けずに農地転用すると、農地法違反となります。

違反転用が発見されると、次のような流れに従って対応措置がとられます。

違反転用に対する措置について
違反が確定すると「工事の中止」や「原状回復」等の命令がくだります。
さらに、厳しい罰則規定があります。

【罰則規定】

違反転用した場合「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」となります。
そして法人の場合は、罰金が「1億円」に引き上げられています。

【さらに注意!】
もし無許可で太陽光パネルを設置していた場合、撤去命令が下ります。
原状回復にむけて撤去費用がかかるだけでなく、将来見込んでいた売電収入も全て無くなります。
相当なリスクになりますので、ご注意ください。
(参考)
農地転用違反で実際に認定が取り消しされた事例
太陽光発電で農地法違反 初の認定取り消し 沖縄の業者(日本農業新聞 2019.03.16)

 

5.  ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の場合は農地の「一時転用」許可が必要

「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」の場合は、農地の「一時転用」許可が必要です。

ソーラーシェアリングとは、下の画像のように農地の上に架台を立てて太陽光パネルを設置し、農業をしながら売電収入を得ようというものです。

なお、「一時転用」の許可が必要になるのは、架台の柱の部分に接している地面だけです。

面積にすると「柱の断面積×本数」になります。
大半は「農地」のままですので、固定資産税等はほどんど変わりません。
これは農地だけに与えられた特権です。

ただ、非常に厳しい要件がありますので、十分な準備が必要です。

詳しくは次の記事を参照ください。

ソーラーシェアリングの教科書|奈良県No.1のプロが秘訣を初公開【実地見学可能】

ソーラーシェアリングの教科書

まとめ

いかがでしたでしょうか。

この記事では次のことをご説明しました。

・農地転用許可制度の概要
・農地区分の調べ方と転用可能かの目安をつける方法
・農地転用の申請手続き方法
・転用許可が不要なケース
・違反した場合の罰則規定
・ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)による農地の一時転用

あなたの所有する農地がどのようにすれば農地転用できるかどうか、おわかり頂けたと思います。

一つずつ丁寧におさえていけば、決して難しいものではありません。

またソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)という、一時転用で農地に太陽光パネルを設置する方法もご紹介しました。

この記事を通じて、あなたの大切な農地を有効活用する手助けになれば幸いです。

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