ソーラーシェアリングの教科書|奈良県No.1のプロが秘訣を初公開【実地見学可能】

ソーラーシェアリングの教科書
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皆さんは、田んぼや畑で太陽光発電をしているのを見かけたことがないでしょうか?

それは、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)と呼ばれるものです。

ソーラーシェアリングは、ひとつの農地で農作物と太陽光発電での電気を得るための取り組みです。

太陽から得られる安定的な売電収入と、農作物の販売収入で農家さんの収入アップに役立ちます。

 

それでは、こんな疑問をお持ちではありませんか?

・ソーラーシェアリングって何だろう?

・自分の田畑(農地)でもできるのだろうか?

・普通の太陽光発電と何が違うの?

・どんなメリットとデメリットがあるのかな?

それもそのはず。

実は2019年現在で稼働済みのソーラーシェアリングは1500件程度と、まだまだ普及段階に至っていません。
つまり、それだけ正しい知識や詳しいノウハウ、稼働後の運用の落とし穴などを知る人が少ないのです。

そんな中私たち『農地コンシェルジュ』は、農業法人を立ち上げて蓄積した農業ノウハウと7000件超える太陽光発電の施工実績を土台にして、20基以上のソーラーシェアリングを作ってきました。

この記事では、私たちがソーラーシェアリングの概要から具体的な質問までひとつひとつ丁寧に解説しています。
この記事を読むと、次の7つのことがわかるようになります。

(1)ソーラーシェアリングの基礎知識
(2)ソーラーシェアリングのメリットとデメリット

(3)失敗しないための6つの重要ポイント

(4)設備、融資、手続き、作物などの導入事例

(5)費用シミュレーション

(6)よくある質問

(7)ソーラーシェアリングの今後

ソーラーシェアリングのメリットだけでなく、デメリットも把握して、あなたとあなたの農地に合ったソーラーシェアリングを導入すれば、農業での収入アップや農地の活用に役立つことでしょう。

ソーラーシェアリングをまったく知らないあなた。
いろいろ調べたけど今一つピンと来なかったあなた。

ぜひ、私たち『農地コンシェルジュ』と一緒にソーラーシェアリングの世界をひも解いていきましょう。

目次

1. ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)とは?

この章では、ソーラーシェアリングの定義や制度が導入された背景など、入門的な基礎知識を解説していきます。

おさらいの意味もかねて読み進めてください。

1-1. ソーラーシェアリングは農家の収入を安定的な売電収入で底上げできる救世主

タマリュウでのソーラシェアリングの例

タマリュウでのソーラシェアリングの例

まず最初に、ソーラシェアリングの定義を確認しましょう。

ソーラーシェアリングとは、畑や田んぼなどの農地に支柱を立て架台を作り上部で太陽光発電を行い、下部で農作物を育てて農業を営むことをいいます。(上の写真参照)

ひとつの農地で空から降り注ぐ太陽の光を、地面の作物と太陽光発電の設備でシェアする(分け合う)ことから、「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」と呼ばれています。

つまり、農業収入を得ながら発電設備による売電収入も得られるという「ハイブリッド事業」なのです。

『なるほど!収入が増えるのね!』と思われたあなた。

実は、太陽光発電ならではのメリットがさらに2つあるのです。

(1)太陽光発電の売電収入は、多少の季節的変動はあるものの計算しやすく安定している

(2)太陽光発電の売電収入は、電気の購入単価と期間が決まっており、価格競争にさらされない

農業経営に、太陽光発電の特長を保険のように組み合わせることで、より安定したものにできると注目されています。

 

1-2. 意外と少ない!? ソーラーシェアリングの稼働件数はまだ1500件程度

ソーラーシェアリングの制度は2013年にはじまりました。

通常であれば太陽光発電を設置できない「農業振興地域」や「1種農地」にも太陽光発電設備が設置できる画期的な制度としてスタートしました。

ところが2018年3月時点での農林水産省が発表している許可実績の件数は、1905件(内394件は再許可)にとどまっています。

(参照:農林水産省pdf資料「営農型発電設備の設置に係る許可実績について(平成30年3月末現在)」)

また農業を推進するための制度であるにも関わらず、パネル下での農業の実証データが少ないため懸念されるケースが多くありました。
さらに一時転用許可期間が3年(3年間で見直し・再申請が必要)というルールもあって、市場では期待されるほどには導入が進みませんでした。

1-3. ソーラーシェアリング普及に向けた2つの追い風:農地転用の規制緩和と未来投資戦略の閣議決定

ソーラーシェアリングは農業の救世主と期待されながら、なかなか普及が進んでいません。
そんな状況に2つの追い風が吹きました。

・条件を満たせば、農地の一時転用許可期間が10年に延長される
・未来投資戦略においてソーラーシェアリングを促進する内容が閣議決定された

手続き面と費用面からソーラーシェアリングを導入しやすい環境が整いつつあります。

1-3-1. 条件を満たせば農地の一時転用許可期間が3年から10年に延長される

2018年5月に制度が改正され、下記の条件を満たせば一時転用許可期間が3年から10年に延びることになりました。

ソーラーシェアリングの一時転用許可期間延長説明図

農地転用の一時転用期間を3年から10年に延長するには下記のいずれかの条件を満たす必要があります。

・ 担い手が所有している農地又は利用権等を設定している農地で当該担い手が下部農地で営農を行う場合
(※この場合の「担い手」とは、効率的かつ安定的な農業経営体、認定農業者、認定新規就農者、法人化を目指す集落営農をいいます。)

 

・ 農用地区域内を含め荒廃農地を活用する場合
(※この場合の荒廃農地とは、「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査要領(平成20年4月15日付け19農振第2125号農林水産省農村振興局長通知)」の2に規定する荒廃農地をいいます。その判断は農業委員会が行います。)

 

・ 農用地区域以外の第2種農地又は第3種農地を活用する場合

出典:農林水産省pdf資料「営農型太陽光発電設備の農地転用許可上の取扱いの変更について」

 

この改正でより活用しやすいものとなり、導入を検討される方がどんどん増えてきました。
このような制度変更に至った背景には、農業政策上の効果が見えてきたことがあげられます。
具体的には「農家の所得向上」と「荒廃農地の解消」です。
件数が増えるとともにこれらのプラス効果が表れてきたため、国としてもソーラーシェアリングを早急に普及させようということになったのです。

1-3-2. 未来投資戦略においてソーラーシェアリングを促進する内容が閣議決定された

さらに追い風として、2018年6月15日に閣議決定された「未来投資戦略2018」において下記のことが明記されました。

・農業ビジネスについて、民間金融機関からの資金調達に際して信用保証制度が幅広く利用可能となるよう、保証制度を見直す。
・農地の有効活用及び農業者の所得向上に資する営農型太陽光発電を促進する。

首相官邸HP 未来投資戦略2018 69ページ

農業(ソーラーシェアリングも農業という概念)に対しての融資取り組みを推進していく方向に舵をきったのです。
かつて日本政策金融公庫は、ソーラーシェアリングに融資枠を設けていませんでした。
しかし現在は日本政策金融公庫をはじめJA・信用金庫・地銀も連動するように、ソーラーシェアリングに対して融資枠を設けはじめています。
農林水産省:営農型太陽光発電に係る金融機関支援メニューの例 35ページ

すなわち国をあげて推進していく制度であるということです。

2. ソーラーシェアリングを導入する4つのメリット

この章では、ソーラーシェアリングを導入する4つのメリットについて詳しく解説していきます。

メリット(1):安定した売電収入を得られる

メリット(2):土地の固定資産税がほぼ「農地」のままなので負担が少ない
メリット(3):農地を有効活用できる
メリット(4):農作業しやすい環境の整備ができる

 

メリット(1): 安定した売電収入を得ることができる

10kW以上の太陽光発電は、固定買取価格制度を活用して20年間同じ売電価格で電気を売ることができます。
これだけでもある程度安定した売電収入を期待できます。

さらにソーラーシェアリングは設置予定地が農業振興地または1種農地が多いので、周囲に建築物が立つ可能性はかなり低いです。

一般的な野立ての太陽光発電よりも、設置後に発電量が下がるリスクが小さいので、より安定した売電収入を期待できます。

 

メリット(2): 土地の固定資産税がほぼ「農地」のままなので負担が少ない

一般的な野立ての太陽光発電は敷地全体を農地転用するため、固定資産税が数十倍になることもあります。

ソーラーシェアリングでは、支柱部分の土地だけを一時的に農地転用します。
敷地の大部分は農地のままです。
固定資産税が大きく変わらないので、少ない税負担のまま太陽光発電が設置できます。

 

メリット(3): 農地を有効活用できる

農地を所有されている方には、このような悩みもお持ちかもしれません。

「農業を続けるのが辛く荒れ地になっている」
「農地を相続で譲り受けたが、どうすればいいのかわからない」

持て余していた農地でもソーラーシェアリングで安定した売電収入が得られるのでれば、積極的な活用を検討できるようになります。
無理しない範囲で栽培できる農作物を選ぶこともできるようになります。

 

メリット(4): 農業を続けやすい施設環境を作ることができる

ソーラーシェアリングの設置の際に土壌改良工事もできる

農地には下記のような悩ましい箇所が幾つもあるかもしれません。

「水はけが悪く作物が育たない」
「水路との関連性が悪く耕作を諦めている」

ソーラーシェアリングを設置する際は、お金をかけて農地の整備を行います。
このタイミングであれば、今まで諦めていた条件の悪い土地の改良工事も併せてすることができます。

ソーラーシェアリングの架台を活用して農作業しやすい環境を整えられる

ソーラーシェアリングでは太陽光パネルを取り付けるための架台を設置します。
その架台をうまく活用すれば、高設栽培などで高収益野菜を育てられる環境を作ることができます。
架台と高設ベッドを別々に導入した場合に比べ、一体型で設計した方が部材を削減でき強度もアップするので大幅なコストダウンが図れます。
腰痛でお悩みの方も前かがみにならずに作業できるので、作業効率を高めることができます。
さらに夏場の強い日差しの中でも影ができるため農作業がしやすくなり、熱中症予防にも一役買います。

 

3. ソーラーシェアリングの3つのデメリット

この章ではソーラーシェアリングの3つのデメリットを説明します。
2つは手続き関係、1つは農作業についてのデメリットです。

きちんと対策を立てて対応しましょう。

デメリット(1): 農地転用手続き(定期的に必要な再申請)が面倒! 場合によっては設備の撤去命令のリスクがある

ソーラーシェアリングは、本来は認められていない農地に太陽光パネルを設置するわけですから、厳格な手続きが必要になります。
煩雑でかつ定期的に再申請が必要なので大変面倒です。

またソーラーシェアリングは農業の維持が必須です。
計画通りにできていなければ農業委員会から指導が入ります。
定められた制度に違反した場合には、撤去命令が下ることもあります。
このリスクは十分認識しておきましょう。

ソーラーシェアリングの趣旨は安定した売電収入で営農を支援することです。
まじめに農業に取り組まれる限りは、非常に心強い制度とお考え下さい。
逆に農業をするつもりもないのに売電収入欲しさに「投資」感覚で手を出されるようでしたら、考え直されるのも一つの選択肢かもしれません。

デメリット(2): 毎年作物の収穫量を報告する義務がある

ソーラーシェアリングの設置許可を得るにあたり、営農計画書を提出します。
その営農計画書には、作物の収量と販売金額もしくは自家消費などの数値を記載します。
作物が栽培され順調に育っているかを示す写真の添付も必要です。
そして毎年計画通りに営農ができたかどうかを報告します。
計画通りでない場合はその理由と根拠、さらには改善策などをあわせて報告します。
農地に太陽光パネルを設置することを認めてもらってるわけですから、収入の安定と引き換えにこういった手続きはきちんと行いましょう。

順調に営農できている限りは、その数値を記入して提出するだけですからそれほど時間はかかりません。
しかし不測の事態で計画通りにいかなかった場合は、別途報告書の作成が必要です。
それなりに根拠のある理由を書くためには、相談できる窓口を作っておいた方がよいでしょう。

施工業者の中には継続的にメンテナンスしているところもあります。
設置農家から様々な相談を受けていると思いますので、参考になる事例を教えてもらえるかもしれません。
実際、我々も栽培方法の工夫や作物の変更等の相談をよく受けることがあります。

デメリット(3): 売電期間中は農業を続ける必要がある

ソーラーシェアリングの設置にはお金がかかっています。
融資を受けている場合、それを売電収入で10年から15年かけて返済していきます。

農業をやめてしまうと、一時転用許可の再申請がおりません。
そうならないためにも売電期間中は農業を続ける必要があります。
どうしても無理なら営農代行を頼むなどの方法を検討しましょう。

計画どおりに農業(営農)をすることが、ソーラーシェアリングの大前提なのです。

「義務」ではなく農業を続けるための「サポート」と考える

これらのデメリットは、ソーラーシェアリングの足かせのように感じるかもしれません。
しかしそこは少し気持ちを切り替えて考えてみましょう。
「義務」と捉えず「経営」の気持ちで取り組まれてはいかがでしょうか。

国が一時転用期間を条件付きとはいえ10年に延ばしたということは、それだけ長期的な視点で営農計画を立ててほしいということです。
「農業」に加え「売電」が収入を下支えしてくれるのですから、きちんと計画だてて管理してこそソーラーシェアリングをする意義があると思います。

それによってこれまで不確定要素が多かった農業も見える化できることになります。
より効率の良い農業に転換するきっかけになるのではないでしょうか。

ソーラーシェアリングの農業の見える化のイメージ図

4. 失敗しないためのソーラーシェアリングの6つの重要ポイント

4-1. 営農を継続するためには家族・親族・協力者の同意と協力を得よう

農業(営農)を継続するには必ず助けが必要となります。
一人では農業継続は難しいのです。

農法にもよりますが、一人では作業できないことも多くあります。
(ビニールシートをはったり荷物の運搬など)
また精神的にもきついです。
台風や病気で作物栽培が不調な時は気が気でありません。

でも、相談したり共感できる相手がいれば精神的ダメージもやわらぎます。
作物が順調に成長してくれれば喜びを分かち合うこともできます。
まわりから同意と協力を得ておくことは最重要ポイントといえるでしょう。

4-2. 近隣からの了解を得て、必要なことは協力しよう

4-2-1. トラブルを避けるために、事前に隣地所有者などと話しておこう

ソーラーシェアリングは設備の高さが約2m~4m位になります。
太陽光パネルの下にはもちろん影ができます。

近隣農地にまで影が伸びることもあります。
設計を間違えると、延びた影が近隣の農地所有者・農業従事者の作物に支障をきたすことも考えられます。
他にも設備自体の圧迫感や、風の流れ・水の流れを変えてしまうこともあります。

設置後にトラブルになると簡単には解決できないため、いろいろと面倒です。
必ず近隣(隣接農地の所有者・農業従事者・水利組合・農業委員会等)に承諾を頂いてから事業計画を進めていきましょう。

特に水利組合や土地改良区、農地適正化推進委員などは制度上印鑑が必要になります。

 

4-2-2. 地域との連携作業に協力しよう

農地には、農地として維持する義務があります。
畔の草刈りや水路の一斉掃除など一人ではできない作業もあるので、必ず地域の人々と連携作業することになります。

農地を維持するためにも、周囲の理解を得られるようできるだけ協力しましょう。

4-3. 農地の個性を知って作物を選ぼう

ソーラーシェアリングを続けるには、一定量の作物を収穫する必要があります。
農地の個性に適した作物を選んだほうが、より多くの収穫を期待できます。

実は、農地にもそれぞれ個性があります。
むしろ、まったく同じ農地など無いと言っても過言ではありません。

日当たりの悪い農地。水はけの悪い農地。風通しの悪い農地。
落ち葉がたまる農地。獣害の受ける農地。接道していない農地。
水を入れるのに隣から分けてもらわなければならない農地。
特定時期(稲作時・台風・雨)に水路からの漏水で水が溜まる農地・・・・・。

どんな個性を持った農地なのか正しく把握して、適した作物を選びましょう。

ソーラーシェアリングを設置すると、パネルの影で農地が乾燥しにくくなります。
実績からみますと、ソーラーシェアリングには「水はけが良く」「風通しの良い」農地がお勧めです。

4-4. パネルやパワコンのスペックよりも架台の強度を重視しよう

ソーラーシェアリングの架台が倒壊した図

架台の強度が足りないと、台風や積雪で倒れることもあります

多くの太陽光施工業者は、パネル1枚の出力やパワコンの変換効率については説明してくれますが、架台の強度については説明してくれないことがほとんどです。

ですが、ソーラーシェアリングでは架台の強度が一番大切です。

架台が倒れてしまったら売電収入そのものが途絶えてしまい、融資の返済すらできなくなるからです。

どれくらい頑丈な架台が必要なのか、その基準は「電気設備の技術基準の解釈」で決められています。
日本工業規格(JIS C 8955)が基準です。
施工業者が遵守できているかきちんと確認しましょう。

4-5. 販売店・施工業者の見極めの大事さを知っておこう

通常の「太陽光発電設備」の販売・施工実績のある会社は数多く存在します。
しかし「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」の販売・施工実績のある会社となると、まだまだ少ないのが現状です。

ソーラーシェアリングと野立ての太陽光発電設備は根本的に設計・施工が異なります。

・畦畔や給排水など農地に合わせた設備設計
・栽培作物に合わせた採光率設計
・地域性に合わせた強度設計

・農作業や農業機械などの空間を確保した設計

・雨水や積雪が農地に与える影響を考慮した設計

このような違いを知らずに「太陽光発電設備は全て同じ」と考えるのは危険です。
さらにソーラーシェアリングにしかない手続き(農業委員会への手続き)も相談に乗ってもらえるかどうか要確認です。

ソーラーシェアリングはメンテナンスも含めて「20年」のスパンで考えなければなりません。
あなたの目で見ること・触って確認することが大切です。

まずは施工業者の販売実績件数・施工実績件数を確認し、施工現場を見学させてもらえるようお願いしてみましょう。
見学を受けてくれるかどうかで、その施工業者がユーザーから信頼されているかどうかがわかります。
施工業者を選ぶときの判断材料にされるとよいでしょう。

4-6. 農業(営農)での相談窓口も確保しておこう

通常の土耕栽培や施設栽培であれば相談に乗ってくれる窓口はたくさんあります。
※例えば農協、各都道府県の農林部、種苗販売店など。

しかしソーラーシェアリングとなると話が違ってきます。
下部空間は一定の割合で影となることから、そこでの栽培実証をご存知の機関はまだまだ少ないようです。
また遮光率を何%にするかによって、栽培できる作物も変わってきます。
この点、実際にソーラーシェアリングを実施している農業法人等であれば、実証データも蓄積していると思われます。

必ず相談がしたいことがでてくると思われますので、事前に窓口を確保しておきましょう。

5. ソーラーシェアリング導入の流れ

この章では、実際にソーラーシェアリングを導入するまでの流れを説明します。
大まかに3段階に分かれます。

・収支をシミュレーションして導入を決定する
・初期費用を調達する
・設置前の手続きを行う

それでは各段階を見ていきましょう。

5-1. 収入と支出のシミュレーション事例

概算シミュレーションは下記のようになります。

農地面積 : 800㎡
設置面積 : 500㎡
設備容量 : 65kW
総支出額 : 2,000万円
(内訳)
- 初期設備費等 : 1,500万円
- 保険、利息等 : 500万円
売電価格 : 21円
月額収入 : 115,000円/月
総収入額 : 2,760万円(20年)
回収率  : 138%(総収入/総支出)
総収支額 : 720万円(総収入-総支出)

売電価格21円の時のものです。

詳細なシミュレーションは施工業者にお問い合わせください。

ソーラーシェアリングキャッシュフローシミュレーション

ローン完済後は、売電収入がまるまる利益になります。

5-2. 融資に関する事例

下記は初期設備費を頭金なしで組んだ融資の事例です。

借入金額 : 15,000,000円

自己資金 :  0円
返済年数 : 15年
返済年額 : 1,158,000円(元利均等)

売電収入 : 1,447,000円(初年度)
-        1,380,000円(20年間の予想平均)

制度改正でリスクが小さくなったことで、融資がおりやすくなりました。
とはいえソーラーシェアリングを理解していない金融機関もまだまだあるようです。
できれば実績の多い施工業者を通じて金融機関を紹介してもらうことをお勧めします。

 

5-3. ソーラーシェアリングの導入前に必要な3つの手続き

ソーラーシェアリングは設置前にいくつかの手続きが必要です。

重要なのは次の3つです。

・電力会社への手続き(電気を売買するための契約)
・経済産業省への手続き(固定価格買取制度を活用するための手続き)
・農業委員会手続き(農地転用手続き)

すべてソーラーシェアリングで必要な手続きです。
それぞれ説明します。

 

5-3-1. 電力会社への手続き

電力会社へは「接続契約」と「特定契約」という手続きが必要です。

「接続契約」は、電柱に繋いでもらうこととその工事を負担する契約です。
「特定契約」は、発電した電気を電力会社に売るための契約です。

以前は電力会社への手続きと経済産業省への手続きを並行して進めることができました。
しかし2018年8月の改正で、電力会社への手続きを済ませてからでないと経済産業省への手続きができなくなりました。

電力会社への手続きを早く済ませないと、経済産業省への手続きがどんどん遅れていきます。

5-3-2. 事業計画認定手続き

経済産業省へは固定価格で買い取ってもらうための「事業計画認定」の取得が必要です。
インターネットでの電子申請になります。
マニュアルは下記です。

より見やすく解説している記事もありますので、参考にしてください。

この手続きが遅れると、買取価格が翌年以降のものになってしまいます。

5-3-3. 農業委員会手続き

農業委員会へは農地の「一時転用許可」という手続きが必要です。
これは一般の太陽光発電にはないソーラーシェアリング独特の手続きです。

農地に架台を設置するにあたり、支柱の部分だけ一時的に農地転用の許可を得ることをいいます。
支柱の面積×本数だけですので、農地全体の固定資産税はほとんど変わりません。

具体的な書類としては、設備の設計図、営農計画書、営農作物に対する根拠資料など多岐にわたります。
とても一人で作成できるものではありませんので、施工業者に相談することになります。
その施工業者を選ぶ際は、太陽光パネルの実績だけでなく『ソーラーシェアリング』の実績の有無も確認しましょう。

農地は本来農業をするためのものであり、それを前提に固定資産税など様々な面で優遇されています。
ソーラーシェアリングは、農業を続けるという条件付きで、固定資産税が安いまま太陽光パネルを設置するという、農林水産省が認めた特例です。
条件付きの特例ですから、厳格な手続きが必要となるのです。

 

5-3-4. 他に必要な手続きがないか、関係法令手続き状況報告書で確認が必要です

農地の場所によっては、ほかの法律や条例の手続きが必要になります。

設置業者と協力して、関係法令手続き状況報告書で確認して、漏れがないようにしましょう。

 

5-4. 手続きに関する費用にご注意

ソーラーシェアリングの手続きには、施工業者以外に支払う費用が発生します。
意外と大きな費用になりますから、収支シミュレーションの際に見込んでおく必要があります。

手続きごとにかかる費用と期間の目安は次の表のとおりです。

手続き 支払先 金額の目安 期間の目安
電力会社への手続き 電力会社 50,000円~
800,000円程度
30日程度
設備認定手続き 代行業者 ~100,000円程度 数か月程度
農業委員会手続き 行政書士など 200,000円~
300,000円程度
60日~90日程度

あくまで目安ですが、手続きの費用だけで250,000円以上必要になります。

電力会社に直接支払う手続き料など、施工業者の見積に載っていないものもあります。
(施行業者が金額を決められないからです。)
シミュレーションの際にはこういった金額もすべて含めて検討しましょう。

5-5. 手続きに不備があると訂正に時間がかかります

5-5-1. 経済産業省への手続きに不備があると訂正に時間がかかる

固定価格買い取り制度は、再生可能エネルギー普及のために割高で電気を買い取ってくれる制度です。
その分厳しい手続きがあります。

不備なく書類を整えても、経済産業省の認定手続きには3ヶ月以上時間がかかります。
不備があれば差し戻されて再提出になるため、余計に時間がかかります。

発電開始までの計画が狂わないように、申請前に書類を再確認しましょう。

5-5-2. 農業委員会が開催されるときにしか農地転用の手続きができない

農業委員会手続きの不備も大幅な遅れの原因になります。

市町村にもよりますが、農業委員会の審査は多くて月1回程度です。
不備があって再提出となったら、少なくとも1ヶ月単位で計画が遅れます。

急いては事を仕損じます。
できるだけ慎重にすすめましょう。

6. ソーラーシェアリングの架台の違い

ソーラーシェアリングの架台は、素材や機能で様々な種類があります。
架台の種類によって価格や設置後の発電量(=売電収入)が変わってきます。

この章では、ソーラーシェアリングの架台について種類と機能を説明し、どの架台が一番お勧めなのか説明します。

6-1. ソーラーシェアリングの様々な設備方式

架台やパネルの組み方には様々な方式があります。

6-1-1. さざ波式(アルミ架台)

ソーラーシェアリングの基本モデルです。
アルミは軽くて錆びにくいため、現在の主流となっています。
パネルの間隔を変えることで遮光率を調整できる反面、設置面積が広くなりコストが上がります。ソーラーシェアリングさざ波方式アルミ架台

 

6-1-2. アレイ式(アルミ架台)

基本仕様は野立て太陽光発電架台の改良モデルです。
パネルを複数組み合わせて「アレイ」を構成します。
遮光率はかなり高くなるため、陰性植物に特化することになります。

ソーラーシェアリングアレイ方式アルミ架台

 

6-1-3. 追尾式(1軸)

発電量1.3倍~を期待できるモデルです。
太陽の動きにあわせて回転し、パネルあたりの発電効率を高めます。
ソーラーシェアリング追尾式1軸

 

6-1-4. 追尾式(2軸)

発電量1.5倍~を期待できるモデルです。
季節や時刻にあわせてパネルを太陽に対して垂直になるよう追尾します。
最も発電効率の良い方式です。
ソーラーシェアリング追尾式2軸

 

6-1-5. 単管パイプシェアリング(鋼管)

ソーラーシェアリングの初期モデルです。
取付が簡単でメンテナンスが容易です。
ソーラーシェアリング単管パイプ(鋼管)

 

6-1-6. 可動式単管パイプシェアリング(鋼管)

パネルを手動で動かすことができます。
季節によって効率の良い角度に調節できます。
ソーラーシェアリング可動式単管パイプ(鋼管)

6-2. 設備方式の違いによるコストと効率性の関係

設備方式の違いによるコストと効率性の関係は下記のようになります。

ソーラーシェアリングの架台方式のコストと効率の関係

これ以外にも耐久性や施工コストなどの要因が絡んできます。
農地の状況や農業にどれだけ労力をかけられるかなども考慮しながら、施工業者にご相談ください。

6-3. お勧めの架台はさざ波式のアルミ架台

様々な架台がありますが、画像や名称だけでは違いを実感できないので迷われることと思います。

そこで6種類の架台をコスト面、メンテナンス性、発電量で比較してみました。

架台方式 架台コスト 農地コスト メンテナンス性 発電量
さざ波式(アルミ架台)
オススメ
アレイ式(アルミ架台)
追尾式(1軸) × ×
追尾式(2軸) × × ◎理想的
単管パイプシェアリング
(鋼管)
△ サビに注意
可動式単管パイプシェアリング(鋼管) △ サビに注意

 

一番お勧めなのは、さざ波式(アルミ架台)です。
コスト、メンテナンス性、発電量のバランスが一番良いからです。

アレイ式(アルミ架台)はアレイごとに架台を独立させられるので、さざ波式に比べて架台コストは安く済みます。
ただ、農地の広さがある程度必要なため、農地が狭いとかえって割高になります。

追尾式は夏至でも冬至でも太陽を追いかけるので、発電効率は高くなります。
しかし、導入費用が高く維持管理費も割高になるため、現在(2019年)の売電価格では採算を取るのは非常に厳しいと思われます。

単管パイプは組み立てやすく、メンテナンスもしやすいのでDIYで組み立てる方もおられるようです。
ただし、アルミと比べて錆(サビ)が発生しやすいため、日ごろから点検が必要です。
ちょっとした錆や留め具のゆるみなど、自分で点検して自分で直せるという方以外にはお勧めできません。

以上を鑑みますと、軽くて錆びにくい「アルミ架台」で、柔軟にパネルを配置できる「さざ波式」で組むのが良いと思います。

7. 農業(下部栽培)について

この章ではソーラーシェアリングに適した作物や販売ルートについて説明します。

実際に私たちが栽培したことのある作物や、販売したことのあるルートです。
これらの作物なら、適切な遮光率で栽培すれば販売できる作物に育ちます。

7-1. 『農地コンシェルジュ』で栽培実績がある12種類の作物

ソーラーシェアリングで実績のある主な作物は下記です。
原木しいたけ、ミョウガ、タマリュウ、サカキ、ブルーベリー、お米

その他にも下記の作物を育てた実績があります。
きくらげ、レタス、大葉(シソの葉)、アスパラガス、葉ワサビ(畑ワサビ)、水耕栽培

さらに下記の作物も今後育てる予定です。
チンゲンサイ、ほうれん草、小松菜、にんにく、里芋

7-2. ソーラーシェアリングに適した栽培作物と遮光率の関係

私たち『農地コンシェルジュ』で実績のあるソーラーシェアリングの農作物とその遮光率を紹介します。
遮光率が高いほど、地面への影が多くなります。

※表の遮光率はあくまでも目安とお考えください。設置環境と作物のデータに基づいた設計が必要になります。

遮光率の目安 栽培作物 コメント
90~100% 原木しいたけ

ソーラーシェアリングの原木しいたけの画像

 

 しいたけは紫外線を嫌うので限りなく遮光した方が良いです。
架台の周りを遮光カーテンで囲う場合もあります。
80~90% ミョウガ

ソーラーシェアリングのミョウガの画像

 比較的手間がかからず、日影を好む植物です。
70~80% タマリュウ

ソーラーシェアリングのタマリュウの画像

 

 耐暑性・耐寒性があり、日陰にも強く、また土壌を選ばないので、非常に使い勝手が良い植物として知られています。
60~70% 榊(さかき)

ソーラーシェアリングのサカキの画像

 

 比較的手間がかからないため、初心者向きです。
50%前後 ブルーベリー

ソーラーシェアリングのブルーベリーの画像

 ポッド栽培の場合は、乾燥を防ぐためにも灌水装置を導入した方が良いでしょう。
20%以下 お米

ソーラーシェアリングの稲作の画像

 お米は非常に太陽を欲しますので、遮光率は20%が限界でしょう。

 

7-3. 作物の販売先実績

販売先としては下記の実績があります。
大手スーパー、生協、道の駅、産地直場所

近頃は、とれとれ市場などの産地直売所がとても賑わっています。
毎朝、農家の方々が採れたての野菜や果物を持ってこられます。
価格も自分でつけておられるそうです。
これから販路を拡げようとお考えの方はぜひご検討ください。

ソーラーシェアリングの産地直売所の画像

 

8. ソーラーシェアリングに関するよくある質問

この章では、ソーラーシェアリングに関してよくある質問に一問一答でお答えします。

 

8-1. ソーラーシェアリングの導入に関するQ&A

Q1: 売電(ばいでん)の仕組みについて教えて下さい。

A:「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」で、20年間売電できます。

ソーラーシェアリングの大きな魅力は、発電した電気を20年間売ることで安定した収入が得られることにあります。
国が定めた「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」いわゆるFIT制度によって、20年間国が電気の買取りを約束してくれるのです。
いわば国によって利益を出すことを約束されている事業です。
だから安心、そして確実です。

 

Q2: 私にもソーラーシェアリングはできますか?

A:チェックシートで確認しましょう。

ソーラーシェアリングを始めるには、事前の準備から開始後に農業を続ける体制まで、様々な準備が必要です。

ソーラーシェアリングを始めようとされている方のために、農林水産省がチェックシートを公開しています。
一通り確認して、できそうか判断してください。

農業者のための営農型太陽光発電導入チェックリスト

 

Q3: 「この地域は太陽光発電設備はつけられない」と聞いたのですが、ソーラーシェアリングなら設置できますか?

A:ソーラーシェアリングなら可能な場合があります。

一般の太陽光発電は無理でも、ソーラーシェアリングなら可能な場合があります。
ご自身で判断せず、設置実績のある施工業者や農業委員会に相談してみてください。

 

Q4: 3種農地といわれたのですがソーラーシェアリングはできますか?

A:可能です。ただし農地転用できるか確認して、野立て太陽光も検討しましょう。

第2種、第3種農地もソーラーシェアリングの対象になります。

 

ですが農地転用できる土地でしたら、かつ現在農業をしていないのであれば、農地転用して野立て太陽光発電にする方が良いかもしれません。
なぜならソーラーシェアリングは、下部での農業が前提だからです。
太陽光をシェアする分、設置面積も野立てより広くとらなければなりません。
また下部で農業ができるようパネルを高い位置につける為、架台のコストもアップします。

 

Q5: これから農業を始めようと考えていますが、ソーラーシェアリングはできますか?

A:はい、できます。

ソーラーシェアリングから始める場合は太陽光発電だけではなく、農業に関しても1からスタートになります。
資金面・知識面等で十分な準備が必要です。
経験豊富な農家の方からご指導頂くと共に、信頼のおける施工業者を選択することをお勧めします。

 

Q6: 仕事に勤めながらでも農業(兼業農家)できますか?

A:はい、できます。

手のかからない農作物もありますので、ご自身のワークライフバランスにあった無理のない農法をご検討ください。
ご家族の協力も大切ですので、話し合いもお忘れなく。

 

Q7: 農地を借りてでもできますか?

A:可能ですが、土地の状態を確認しましょう。

農地を借りて行うこともできますし、共同所有という形態も可能です。
問題は、その土地が農業をできる状態にあるかどうかということです。

借り手を募集しているということは、その農地は何らかの事情を抱えている可能性があります。
耕作放棄地であるならなおさら、そういったリスクを考慮すべきです。
1年や2年体験農業をするわけではありません。
少なくとも20年間は安心して農業が営めるかどうかが大切です。

 

Q8: 農地を借りてソーラーシェアリングを設置する場合、採算は合いますか?

A:農地を借りる前に収支シミュレーションを確認しましょう。

農地の借り賃は10a(1,000㎡)で年間平均10,000円程度(最低5,000円~最高25,000円程度)です。

(例:奈良県下の平成29年分賃借料情報
遮光率にも関係しますが、賃料は売電収入の1%以内に収まるのではないかと思います。

設置費用や期待できる売電収入、さらに融資を受けるなら利率も採算に影響します。

採算が合うかどうかは、農地を借りる前に収支シミュレーションで確認しましょう。

 

Q9: 設備容量は目一杯大きい方がいいですか?

A:一般農家であれば、パワコンの出力50kw未満をお勧めします。
また、敷地全体より一回り小さい規模をお勧めします。

パワコンの出力が50kw以上になると電気主任技術者を選任するとか、キューピクルを設置する等の義務が生じます。
ソーラーシェアリングの実例をみても、一般の個人農家であればほとんど49.5kwあたりになっています。
もちろん法人化して大規模農園でメガソーラーを設置されている農家もおられます。

 

なお、敷地全体を使って設置すると、隣地に影がかかる、農業機械が通りにくくなるなどの問題が起きることもあります。
隣地との兼ね合いも考えて、隣地の承諾を得ることを忘れないでください。

 

Q10: 過積載って違反じゃないの?

A:いいえ、違反ではありません。発電効率を高める工夫の一つです。

過積載は、太陽光発電の設置方法のひとつです。
パワーコンディショナー(パワコン)の設備容量に対して、パネルの容量を大きくします。
太陽光の弱い朝夕の時間帯は、パネルを多目に積んでいる分たくさん発電してくれます。
一方で日中のピーク時は発電し過ぎて余剰分がカットされてしまいます。
パネルが安くなってきた昨今では、ピーク時の余剰ロスよりも朝夕の取りこぼしを減らす方がお得になってきました。
そのため過積載が主流となってきています。

 

ただし、太陽光発電の運転開始後にパネルを増やして過積載にする(事後的過積載)と、売電単価が変わります。
ご注意ください。

 

8-2. 資金・運用関係

Q11: 自己資金が無くてもできるのですか?

A:融資を組めばできますが、無理のない返済プランが必要です。

国の制度の緩和によりリスクが低くなったことで、ソーラーシェアリングに融資してくれる金融機関が増えてきました。
ただ自己資金が少ないとその分返済スケジュールも厳しくなります。
金融機関や施工業者と相談しながら無理のないプランを組みましょう。

 

Q12: 収穫作物の販売はどうしたらよいのですか?

A:基本的にはご自身で販売ルートを開拓する必要があります。

施工業者によっては販売経路を斡旋してくれるところもありますので、プラン作成の際には一度相談してみてはいかがでしょうか。
お近くにとれとれ市場などの産地直売所があれば、窓口に相談してみるのも良いでしょう。

 

Q13: 農業を代行してくれる会社はありますか?

A:はい、あります。

ソーラーシェアリングは営農計画どおりに農業をしていきますので、代行実績のある会社が安心です。
農作業を受託をしている農業法人もありますし、各地のJA等も相談窓口を開いています。

金融機関や施工業者などに相談されるのもよいかと思います。

 

Q14: 売電収入は安定していますか?

A:安定していますが、毎年少しずつ減ると考えておきましょう。

売電価格は国の制度で保証されているので大丈夫です。
しかしパネルの効率は年々落ちていくものです。
これを最高の状態がいつまでも続く前提でシミュレーションしてしまうと、後半息切れするかもしれません。
このあたり損失を見込んだ売電計画を施工業者にたててもらいましょう。

 

また、太陽光発電は定期的にメンテナンスを行う義務があります。
収支計画でメンテナンス費用を見込んでおかないと、予想より収支が悪くなってしまいます。
単純に年額を20倍しているようなシミュレーションは要注意です。

 

Q15: 太陽光発電の故障は、任意保険でどこまでカバーできますか?

A:保険会社ごとに異なります。加入前に確認しましょう。

保険会社によって違いがありますので、加入前に気になる点は確認しておきましょう。

注意すべきは売電収入の部分です。
機器の故障に気付かず長い間発電できていなかった場合、故障している間得られたでえあろう売電収入の逸失は結構な痛手となります。
放ったらかしにせず注意してモニターしておきましょう。
また保険会社によっては休業補償の対象になる場合もあるようです。

 

8-3. ソーラーシェアリングの制度や手続きに関するQ&A

Q16: 近隣の承諾が必要なのでしょうか。

A:農地転用の手続き上、隣接する農地の所有者の承認を得ておきましょう。

ソーラーシェアリングは長期間の事業ですので、事前の挨拶は欠かさないようにしましょう。

ただ公図へ記載されている水路・道路が隣地との間にある場合は、その隣地の同意は必要ありません。
(※あくまで書類上は不要なだけですので、実際には隣接地で売電事業/営農を行うのですから事前に承諾は得ておきましょう。)

 

Q17: 毎年の作物収穫報告が必要ときいたのですが?

A:はい、必要です。

単に報告するだけでなく、営農計画で記載した収量の8割以上を維持しなければなりません。
この営農計画も同じ年の地域の平均的な単収をもとに作成する必要があります。
一時転用許可期間が10年あったとしても、条件がクリアできなければ指導が入ります。
もし達しなかった場合はきちんとした理由書が必要になります。

 

Q18: 「地域との連携」とは具体的に何がどれくらいの頻度であるのですか?

A:地域により様々です。

用水路の清掃やあぜ道、土手の除草など、その地域にある共同管理の農業設備によって異なります。
農業委員会、水利組合だけでなく、近隣の方々とも連携が必要です。
いろいろな方面から理解を得ることが円滑に進める重要なポイントです。

 

Q19: 施工業者との契約で注意すべき点はありますか?

A:停止条件を確認しましょう。

ソーラーシェアリングの場合、進めたくてもどうしようもないケースがでてきます。
具体的には、下記のようなケースです。
・近隣の承諾が得られなかった。
・農業委員会の許可が出なかった。
・融資がおりなかった。
こういった場合、施工主も施工業者も前向きに進めたいにもかかわらず第三者の影響でどうにもなりません。
そのため契約の中にこのようなリスクを停止条件として盛り込んでおいたほうがよいでしょう。

 

Q20: 撤去命令って本当に出るのですか?

A:ルールさえ守っていれば大丈夫です。
そのためにも相談窓口は確保しておきましょう。

「高いお金を払ってるんだから、そんな酷いことはしないだろう」とタカをくくっていると痛い目にあいます。

農林水産省のホームページにも「一時転用許可に違反する悪質なケースへの対応例」がはっきり書かれています。
ご注意ください。

 

8-4. ソーラーシェアリングの導入後に関するQ&A

Q21: 農業ができなくなったらどうしたよいのですか?

A:代わりに営農してくれる人を探すなど、農業を続けるための対応が必要です。

 

ソーラーシェアリングは農業あってのことです。
もし諸々の理由でできなくなった場合は、代わりに農業をしてくれる人を探すなど、農業を続けるために何らかの対応が必要となります。
実績のある施工業者でしたらそういった相談も受けているかと思いますので、一度お問合せください。

 

Q22: 20年後は? その先はどうなるの?

A:電気を自家消費する、相対・自由契約で売電する、発電設備を撤去するなどの選択肢があります。

 

買取期間終了後については、資源エネルギー庁から正式なお知らせが出ています。
選択肢は3つあります。「自家消費」「相対・自由契約」「発電事業の終了」です。

 

自家消費するならリアルタイムで消費するのでない限り、蓄電池が必須です。
しかしソーラーシェアリングの場合自宅と農地が隣接していることは少ないと思われます。
したがって農業だけで消費しきれないとなると、追加で購入する蓄電池のコストがカバーできないかもしれません。

 

相対・自由契約とは、小売電気事業者などに個別契約し直接売電することです。
自由契約ですから価格は保証されていません。

 

メンテナンスや税金などのランニングコストを売電収入で賄えない場合は、

発電事業を終了して設備を撤去することになります。

 

Q23: 廃棄費用も見込んでおかないといけないの?

A:設備費の5%(目安)を廃棄費用として見込み、積み立ての報告をする義務があります。

 

太陽光発電の売電期間満了後、発電設備の撤去にともない大量の産業廃棄物がでることに備え、廃棄費用に関する報告が義務化されました。
(資源エネルギー庁「廃棄費用(撤去及び処分費用)に関する報告義務化について(周知)」)

20年後のこういったコストも見込んでおかなければなりません。

とはいえ、20年後に廃棄する義務はありません。

太陽光発電はメンテナンスを怠らなければ充分発電しますので、自家消費や相対契約での売電もできます。
ローンの返済は終わっているでしょうから、大切に使い続けましょう。

 

9. 今後確実に増えていくソーラーシェアリング市場を知ろう

ここまでソーラーシェアリングとは何か、導入方法や注意点をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

最後に、ソーラーシェアリングの今開発されている技術をご紹介します。
今後増えていくであろうソーラーシェアリングの、未来の姿を想像してみてください。

9-1. ソーラーシェアリングの変遷

ご覧の通り、ソーラーシェアリングは様々な進化を遂げています。

  単管パイプシェアリング(鋼管)・・・鋼管を組み合わせるだけ
    ↓
  可動式単管パイプシェアリング(鋼管)・・・季節的に角度を変えて効率をアップ
    ↓
  さざ波式(アルミ架台)・・・軽く、錆びにくく
    ↓
  追尾式(1軸)・・・一日の太陽の動きを追随
    ↓
  追尾式(2軸)・・・太陽と垂直を常にキープ

ソーラーパネルやパワーコンディショナーの高性能化も著しく、信頼性もますます向上しています。
下部で栽培できる作物も、様々な実証例が出てきています。

9-2. ソーラーシェアリングのさらなる進化

近年ではビニールハウスに直接貼り付ける薄膜型パネルが発売されました。
既存ハウスにも適用できます。
ソーラーシェアリング架台+ビニールハウスの一体型モデルや、屋根そのものが太陽光発電パネルとなっている一体型ハウスモデルも出てきました。
ソーラーシェアリング架台+ビニールハウス+蓄電池の地域連携避難場所モデルというのあります。

ソーラーシェアリングの大型鉄骨ハウスモデルの図

大型鉄骨ソーラーシェアリングハウスモデル

さらには強度のある「大型鉄骨ソーラーシェアリングハウスモデル」も登場しました。

施設栽培(ビニールハウス)ができるようになれば、さらなる安定した高収益栽培も可能になります。

地域特産の栽培作物を育てるもよし。
農業の時短化・高収益化を目指すもよし。
IT化を進めるもよし。
ソーラーシェアリングはその取り組み方次第で、さらなる進化を続けていきます。

9-3. ソーラーシェアリングの未来は明るい

現在日本の抱える農業問題を考えますと、ソーラーシェアリングがますます国をあげて推進されていくのは間違いありません。
さらには「ポスト原発」として、エネルギー問題解決の切り札とも期待されています。
小泉純一郎×津田大介(出典)『EARTH JOURNAL』

今後もソーラーシェアリングの動向に目が離せませんね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では、ソーラーシェアリングについて次の7つのポイントをご説明しました。

(1)ソーラーシェアリングの基礎知識
(2)ソーラーシェアリングのメリットとデメリット

(3)失敗しないための6つの重要ポイント

(4)設備、融資、手続き、作物などの導入事例

(5)費用シミュレーション

(6)よくある質問

(7)ソーラーシェアリングの今後

ソーラーシェアリングは不安定な農業収入を安定した売電収入で支えられる素晴らしい仕組みです。
その反面、20年という長い期間、露地栽培とは異なる農地で農業を続けることが前提になります。

導入するには太陽光発電と農業、両方の知識が必要です。
なにより、周囲の理解と協力が不可欠です。

どちらも一人で手に入れるのは困難ですが、ソーラーシェアリングの経験を持つ良い施工業者と協力できれば可能です。

あなたの農地・農業に関するお困りごとの解決策の一助になれば幸いです。

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