セルトレイをお調べのあなたは、次のことでお困りではありませんか?
・種を畑に直接植えているが、思うように発芽しない
・発芽しても生育にバラツキがある
・もっと効率良く歩留まりを上げる方法はないか
このようなお悩みは、セルトレイを活用すれば解決するかもしれません。
そこでこの記事では、セルトレイについて次のことを説明します。
(1)セルトレイのメリット・デメリット
(2)セルトレイと他の栽培方法との比較
(3)セルトレイの種類・サイズ・規格
(4)セルトレイでの播種(はしゅ)の仕方
セルトレイを賢く使えば、省コストで栽培効率を上げたり、反収をアップさせることが可能です。
もし、セルトレイの導入をご検討中であれば、ぜひこの記事を読んで参考にしてください。
きっと、より良い栽培方法が見つかるはずです。
目次
1. セルトレイとは、小型ポットを多数連結させたトレイのこと
セルトレイとは、小型ポット(セル)をたくさん連結させたトレイのことです。
プラグトレイと呼ばれることもあります。
全体の大きさは約30cm×60cmが主流で、セルの数や大きさ、形などで様々な種類があります。
価格は、1枚あたり100円~250円程度です。
セルトレイの使い方や特長については、次章以降で詳しく説明していきます。
2. セルトレイの使い方
この章では、セルトレイの使い方や栽培できる作物について説明します。
セルトレイは、主に育苗用として使われています。
セルが大きなタイプは、そのまま植木鉢代わりに使われることもあります。
栽培できる作物も様々です。
ここでは主な2つの使い方をご紹介します。
2-1. 育苗用として栽培効率アップのために使う
セルトレイは、育苗用として栽培効率アップのために使われます。
種を露地に地植えした場合、発芽・生育が自然環境に直接影響を受けます。
それに対し、セルトレイであれば、発芽・育苗の時期は管理のしやすい場所で育てて、ある程度育ってきてから移植することができます。
発芽間も無いデリケートな時期を、管理しやすい場所で育てることできるわけです。
また、種によっては発芽しなかったり、生育不良の苗もあります。
セルトレイから生育の良いものだけを選んで移植できるので、移植後の歩留まりも良くなります。
2-2. 家庭菜園にて植木鉢の代わりに使う
セルトレイは、植木鉢代わりに使うこともできます。
安くて便利なことから、家庭菜園でも様々に利用されています。
ベランダなど限られた面積を有効活用できるわけです。
2-3. セルトレイで栽培できる作物|花や葉野菜全般OKだが根野菜は不向き
セルトレイで栽培できるものは、主に花や葉野菜です。
特に制限はありません。
一方、根野菜には、向きません。
トレイの容積に限りがあるため、根がかさ張る根野菜では窮屈だからです。
3. セルトレイのメリット・デメリット
この章では、セルトレイのメリット・デメリットを説明します。
主に育苗に利用した場合を想定しています。
メリットばかりではありません。
デメリットも十分理解した上で、正しく活用しましょう。
3-1. セルトレイのメリット
(1)場所をとらない
セルが隙間なく連結されているので、場所をとりません。
セル1つあたりの面積は、小さくて6㎠程度になります。
288穴に植えても、30cm×60cmです。
(2)セルトレイごと動かせるので管理がしやすい
セルトレイごと動かせるので、状況に応じて温度や水の管理ができるところに移動させられます。
天気の良い日には外に出したりできます。
冬はビニールハウスの中で加温することもできます。
天候の影響を受けにくいようにできるわけです。
(3)雑草・病害虫が少ない
新しい土を使うことが多いので、雑草や病害虫の被害が少ないです。
また露地と違い、下からの病原菌や害虫の浸入もありません。
(4)育ちの良い苗を選んで移植できる
移植するとき、育ちの良い苗を選んで移植できます。
均等に植えても、発芽しなかったり、生育が悪いものが一定割合発生します。
セルトレイで育苗すれば、無事育った苗だけを使って移植できます。
そのため歩留まりが良くなります。
(5)前作の片付けが終わるのを待たなくて良い
地植えの場合は、前作の片付けが終わるまで次を植えることができません。
しかし、セルトレイであれば、前作の終わりに関係なく、適期に次の種を植えることができます。
露地の占有時間を減らせるわけです。
(6)単価が安い(1枚100円~250円程度)
セルトレイは1枚当たり、100円~250円程度で手に入ります。
1株あたりに換算すると、1円以下になる場合もあります。
きれいに洗えば再利用も可能で、割安になります。
※ただし、その場合は消毒することをお勧めします。
(7)器具や機械で播種(はしゅ)ができる
播種(はしゅ)に器具を使えるので、効率化がはかれます。
さらに大量に播種する場合は、専用機械が便利です。
(8)移植(植え替え)も機械でできる
移植(植え替え)も機械でできるので、さらに効率化がはかれます。
苗が規則正しく並んでいるので、機械での移植が可能になります。
3-2. セルトレイのデメリット
(1)セルの容積に限りがあるために根巻きする
各セルの土の量には限りがあるので、根巻きがおきやすいです。
根巻きとは、根の伸びが妨げられ、内側に向くことです。
根巻きをおこすと、移植した後も根が外に向かって伸びにくいので、その後の生育が悪くなります。
根巻きする前に、移植するようにしましょう。
(2)水やりを忘れるとダメージが大きい
セルトレイは、水やりをしないと給水ができません。
なぜなら地面から離れているからです。
ビニールハウス内ですと、雨による給水もありません。
そのため、水やりを怠ると苗へのダメージが大きくなります。
数日間やらないと、枯れてしまう恐れもあります。
水やりは怠らないようにしましょう。
(3)耐久性に欠けるものもある
セルトレイの材質によっては、割れやすいものもあります。
価格が安い分、簡易に作られているものもあるのでやむを得ないところです。
水稲用育苗用トレイを受け皿にするなどして、取り扱いを工夫しましょう。
(4)セルが連結されているので並べ替えができない
セルが連結されているので、セルの並べ替えができません。
トレイ内で生育に偏りがあっても、そのまま育てるしかありません。
また育ってきて隣の葉と重なるようになっても、株の間隔を広げることができません。
生育の偏りは水やりのムラに起因することも多いので、水のかけ方に注意しましょう。
4. セルトレイと他の栽培方法とを管理、コスト、歩留まりの観点から比較
この章では、セルトレイと他の栽培方法とを比較します。
地植え、ポット、ペーパーポットなど他の方法と比較することで、セルトレイの特長がさらによくわかります。
では、一つずつ説明します。
4-1. セルトレイと地植えとの比較
セルトレイと地植えとの比較は、次のとおりです。
セルトレイ | 地植え | |
---|---|---|
場所の移動 | 動かせる | 動かせない |
移植の時の植え傷み | あり | なし |
水やり | 必須 | 適時 |
購入コスト | 発生 | 不要 |
セルトレイごと動かせるという点が、地植えと最も違うところです。
動かせるということは、常に環境の良いところで管理できるということです。
またセルトレイでは根がこじんまりとまとまっているので、移植がしやすいです。
コスト面では、セルトレイの購入コストが発生します。
本来は使い捨てですし、使いまわすにも消毒のコストがかかります。
地植えではコストがかからない点を考えると、無視できません。
4-2. セルトレイとポットとの比較
セルトレイとポットとの比較は、次のとおりです。
セルトレイ | ポット | |
---|---|---|
並べ替え | できない | 育ち具合に応じて並べ替え 株間も調整可能 |
移動 | まとめて移動 | 一つずつ移動 |
設置 | 安定 | 倒れる |
セルトレイはセルが連結されているので、並べ替えができません。
それに対し単独のポットであれば、生育に応じて並べ替えができます。
葉が大きくなれば株間も調整できます。
移動に関しては、セルトレイは何百株も一まとめに動かせるので効率が良いです。
設置についても、単独のポットは倒れやすいですが、セルトレイは安定して設置できます。
4-3. セルトレイとペーパーポットとの比較
セルトレイとペーパーポットとの比較は、次のとおりです。
セルトレイ | ペーパーポット | |
---|---|---|
移植時の植え傷み | 少ない | ほとんどない |
コスト | 単価は高いが再利用すれば割安 | 再利用できないので割高 |
水やり | 上面より給水 | 側面のペーパーからも給水可能 |
播種(はしゅ) | 土入れしやすい 押さえやすい |
柔らかいので土入れしにくい 押さえも手加減が必要 |
移植機での移植 | 定型サイズであれば可能 | 専用治具が必要 |
ペーパーポットとは、紙でできた連結ポットです。
やがて溶けて自然にかえる特長があります。
セルトレイは、移植時にセルから抜く際に植え傷み(植え替えのダメージ)があります。
ペーパーポットは抜かずにそのまま植えるので、植え傷みがほとんどありません。
コスト面では、新品購入ではセルトレイがやや高いです。
ただ、セルトレイは再利用ができるので、その分割安になります。
水やりについては、セルトレイが上からかける水でしか給水できません。
一方、ペーパーポットはパーパーに水がしみ込む形で、側面からも根に給水できます。
保湿性もペーパーポットの方が高いです。
播種については、セルトレイは土入れで抑える際、力をかけやすいです。
この点、ペーパーポットは柔らかいので力加減が必要です。
5. セルトレイの価格・サイズ・規格
この章では、セルトレイの価格や、寸法・穴の数などの規格を説明します。
トレイ全体の外寸は、一般的に28cm×54.5cmが主流です。
その中で、セルの数や寸法の違いで様々な種類が使われています。
作物の種類や、苗の育て方等を基準にして選びます。
5-1. セルトレイの価格
セルトレイは1枚当たり、100円~250円程度で手に入ります。
セル1つあたりに換算すると、1円以下になる場合もあります。
ホームセンターや農業資材店・種苗店で購入できます。
通販でも買うことができますが、少数の場合は送料が割高になります。
5-2. 外寸は各メーカーほぼ同じ
セルトレイの一般的なサイズは、外寸で28cm×54.5cmが主流です。
これは水稲用育苗トレイ(※)にすっぽり入るサイズです。
(※)水稲用育苗用トレイの内寸は、28cm×58cmです。
セルトレイは柔らかくて、割れやすいです。
土を入れさらに水をかけると相当な重量になり、単独では取り扱いが難しくなります。
そこで受け皿として水稲用育苗トレイとセットで使うと便利です。
いろんなメーカーの製品がありますが、穴の数が違うだけで外寸は同じものが多いです。
なお、これ以外には、半分に切ったハーフサイズ(28cm×28cm)もあります。
5-3. 穴の数・穴の寸法の違い
セルトレイの一般的な穴の数と株間は、次のとおりです。
穴数 | 縦の穴数 | 横の穴数 | 株間 |
---|---|---|---|
72穴 | 6 | 12 | 4.5cm |
128穴 | 8 | 16 | 3.4cm |
200穴 | 10 | 20 | 2.7cm |
288穴 | 12 | 24 | 2.3cm |
外寸がほぼ一定(28cm×54.5cm)ですので、穴の数と株間の組み合わせは、おのずと決まってきます。
どの穴数を使うかは、セルトレイでどこまで育てるかを考えて決めることが重要です。
株間が変更できないので、育った時の葉の重なり具合を考えなければならないからです。
また根の張り具合も穴の容量に関係してきます。
セルトレイの中は狭いので、根をしっかり伸ばしたい場合は、穴の容量が大きい方が良いです。
育苗期間の栄養は、その培土から得るしかありません。
そのためセルの容量も重要です。
もちろん穴の容量が多いほど、良く育ちます。
水分の保持力も高いです。
これらを考えると、容量は大きいほどいいですが、その分だけ株数が少なくなることも考えて選びましょう。
5-4. 色の違い
セルトレイの色には、主に白色と黒色があります。
夏は、温度上昇を抑える白色が使われます。
冬は、保温性のある黒色が使われます。
育苗期間は特にデリケートなので、こういった違いも生育には影響します。
6. セルトレイで播種(はしゅ)をする手順
この章では、セルトレイで播種(はしゅ)する手順について説明します。
家庭菜園であれば一つずつ楽しみながら植えていくので良いと思います。
一方で、農業で大量に播種が必要な場合は、効率性も重要です。
セルトレイ専用の器具や機械がありますので、参考にしてください。
6-1. 手で植えるなら一粒ずつ穴に入れていく
手で植える場合、まずセルトレイ全体に土を盛り、表面をならします。
そしてセルごとに穴を開けます。
セルに種を一つずつ手で入れていきます。
指でつまみにくいときはピンセットなどを使います。
6-2. 専用器具を使えば1枚あたり数分で播種可能
専用器具をセルトレイの上に走らせると、セルに一つずつ種が落ちていきます。
セルの境目にギヤをひっかけることで一粒ずつ落ちていく仕組みです。
セルの間隔が異なっても、設定をかえることで対応できます。
8,000円~10,000円程度で販売されています。
6-3. 一発ですべてのセルに播種できるタイプはさらに効率的!
一回ですべてのセルに種を入れられる器具もあります。
セルトレイの穴にあわせて穴が空いています。
そこに1粒or2粒だけ種がはまります。
手で播種するのに比べてかなりの効率化が図れます。
金額は、20,000円~25,000円程度です。
注意点として、株間や種の大きさで規格が異なります。
したがって、専用播種器具を選ぶときには、次のことを確認しておきましょう。
【専用播種器具を選ぶ際の確認事項】
(1)粒の大きさ L / LL
(2)種の表面のタイプ コート種子 / 裸種子
(3)セルに何粒ずつ入れるか 1粒 / 2粒
6-4. 播種機を使えば1時間に100トレイも可能
大量に播種するなら播種機が便利です。
片側から土を詰めたセルトレイを差し込むと、反対側から播種されたトレイが出てきます。
1時間に100枚の播種も可能です。
金額は、安くても200,000円以上で、高いものでは1,000,000円以上するものもあります。
播種のスピードだけでなく、土を入れたりなど様々な機能があります。
なお、機械で播種できる規格が決まっているので、使いたいセルトレイの規格をよく確認してから検討しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事では、次のことを説明しました。
(1)セルトレイのメリット・デメリット
(2)セルトレイと他の栽培方法との比較
(3)セルトレイの種類・サイズ・規格
(4)セルトレイでの播種(はしゅ)の仕方
セルトレイは、使い方次第で幾つものメリットがあります。
少しの出費で反収を上げることも可能です。
もし、次のことでお困りであれば、一度試してみられてはいかがでしょうか。
・種を畑に直接植えているが、思うように発芽しない
・発芽しても生育にバラツキがある
・もっと効率良く歩留まりを上げる方法はないか
使い方次第では、グッと栽培効率が上がるはずです。
セルトレイを賢く使って、あなたの栽培についてのお困りが少しでも解消されれば幸いです。