ソーラーシェアリングに興味を持たれたあなたは、初期費用がどのくらいか気になっているのではないでしょうか。
高額な投資になりますので、検討材料として初期費用の概算やその内訳はおさえておきたいですよね。
そこでこの記事では、農地コンシェルジュのこれまでの施工実績(ソーラーシェアリング20基以上、太陽光発電7000基以上)をもとに、次の2つのことを丁寧に解説します。
(1)ソーラーシェアリングの初期費用の目安
(2)最も発電効率が良く割安な施工事例
(3)必要な設備とその基礎知識
※農地500㎡(150坪・1反の半分)に設置した場合
この記事を読めば、農地500㎡(150坪・1反の半分)にソーラーシェアリングを設置した場合の初期費用の目安がわかるようになります。
さらに各項目の基本的な知識が身につき、自分の農地に設置した場合の概算がたてられるようになります。
なお、この記事でご紹介するのは、初期費用の「目安」です。
ソーラーシェアリングは一つとして同じ条件はありません。
あなたの農地に設置したら幾らくらいになるかの参考資料としてお役立てください。
1. ソーラーシェアリングの初期費用の概算は農地500㎡で700万円から|10年での回収も可能
この章では、ソーラーシェアリングの初期費用の概算を説明します。
正確な金額は現地調査をしてみないことにはわかりません。
それでも、事前にある程度の目安はつけておきたいおきたいところです。
この章を読めば、農地500㎡にソーラーシェアリングを導入した場合の目安がつけられるようになります。
1-1. 初期費用の目安は農地500㎡で700万円から
ソーラーシェアリングを平坦な長方形の農地500㎡に設置した場合、初期費用の概算は約700万円です。
【ソーラーシェアリングの初期費用の概算】
農地面積 : 500㎡
パネル容量 : 50kW
初期費用 : 約700万円
なお、農地は一般的な長方形を想定しています。
極端に細長かったり、いびつな形をしていると、パネルの配置が難しく割高になります。
また、接道していなかったり、囲繞地(いにょうち)などの場合も工事代が割高になります。
あくまで概算とお考え下さい。
1-2. ソーラーシェアリングの収益|年間の売電収入はいくら?何年で回収(償却)できる?
2020年の設置なら10年以内の回収(償却)も可能です。
つまり理想的な構成を組めば、10年で元をとることも可能なのです。
売電単価が13円/kWh(税別)(2020年)の場合、奈良県奈良市で50kWの設備ですと年間売電収入は約71.5万円です。
【簡易的な回収期間の計算式】
初期費用 ÷ 年間売電収入 = 回収期間
700万円 ÷ 71.5万円 ≒ 9.8年
※金利を考慮しない理想的な条件です。諸々条件によっては、もう少しかかるとお考えください。
1-3. 初期費用の6つの内訳とその相場
初期費用は、大きくわけると次の6つで構成されます。
【ソーラーシェアリングの初期費用の内訳】
(1)太陽光パネル : 太陽光を受けて発電するパネル
(2)パワコン : 発電した電気を変換して電柱に流す装置(正式名称:パワーコンディショナー)
(3)架台 : 太陽光パネルを支える設備
(4)工事代 : 架台組立、パネル設置、電気配線など
(5)申請手続費用 : 電力会社手続、設備認定手続、農業委員会手続
(6)オプション : 土壌改良、監視装置、フェンス、防草シートなど
初期費用700万円の内訳は、次のとおりです。
【ソーラーシェアリングの初期費用700万円の内訳(オプション除く)】
(1)太陽光パネル : 200万円
(2)パワコン : 120万円
(3)架台設備費 : 120万円
(4)工事代 : 180万円
(5)申請手続費用 : 80万円
( 合 計 ) 700万円
1-4. 設備容量が大きくなるとキロワットあたりの単価は安くなる
ソーラーシェアリングの初期費用は、設備容量が大きくなると、キロワット単価が安くなります。
なぜなら、設備容量に関係なく金額が一定のものが幾つもあるからです。
そのため、設備容量が大きくなると割安になり、早く償却できることになります。
したがって、農地と資金に余裕があるなら、設備容量を大きくした方が得になります。
設備容量が大きくなる時の、各項目の金額の増減を一覧表にしました。
項目 | 設備容量が大きくなった時のコストの増え方 |
---|---|
(1)太陽光パネル | 設備容量に比例して増える |
(2)パワコン | 設備容量に比例して増える |
(3)架台設備 | 設備容量に比例して増える |
(4)工事代 | |
・架台組立工事 | 設備容量に比例して増える |
・パネル配線工事 | 設備容量に比例して増える |
・電柱からの配線工事 | 一定金額 |
・試運転費用 | 一定金額 |
(5)申請手続費用 | |
・電力会社手続 | 設備容量に比例して増える |
・設備認定手続 | 一定金額 |
・農業委員会手続 | 一定金額 |
1-5. 南向きの段々畑が、最も効率の良い配置ができる
段々畑をお持ちの方に朗報です。
南向きの段々畑は、初期費用を低く抑えられて、かつ最も発電効率の良いソーラーシェアリングをたてることができます。
一般に中山間地域にある段々畑は、耕作放棄地になりやすいです。
なぜなら、次の理由があるからです。
・傾斜地にあり、山道のため、交通の便が悪い場合が多い
・大型農業機械が入りづらく、畑どうしを移るのも一苦労
・農地の集積・大規模化が難しい
しかしソーラーシェアリングであれば、段々畑が最も効率の良い条件となる可能性があるのです。
ソーラーシェアリングは、中山間地域の耕作放棄地問題の解決の一助となるかもしれません。
1-6. ところ変われば最適な構成も変わる
ソーラーシェアリングは、農地の個性によって最適な構成が大きく変わります。
農業に最適な農地が、ソーラーシェアリングにも最適とは限りません。
1-5.項で紹介したように、段々畑がソーラーシェアリングには最適だったという例もあります。
また、水はけが悪く農業をあきらめていた農地でも、組み立て工事の際に大規模な土壌改良をすることも可能です。
台風の度に水に浸かる地域でも工夫次第で活用できます。
今まで農業をあきらめていた農地でも、ソーラーシェアリングでよみがえることがあるのです。
もし農地を持て余している方がいれば、いつもと違った角度から見つめ直してみてはいかがでしょうか。
2. ソーラーシェアリングの初期費用の構成要素と検討のポイント
この章では、ソーラーシェアリングの初期費用とその内訳を説明します。
なお想定は、長方形で平坦な農地500㎡程度でパネル容量50kWを基準に計算しています。
ソーラーシェアリングは1つとして同じ条件はありません。
あくまで目安とお考え下さい。
2-1. 太陽光パネル|200万円
太陽光パネルは、約200万円です。
パネル1枚当たり1万3千円~1万5千円程度のものを150枚使います。
1枚当たり330Wですと、合計49.5kWになります。
見積書においても、単価×枚数でパネルの合計金額がはっきりわかります。
初期費用を全体で安くおさえたいなら、パネルの大きさと発電出力のバランスも考えましょう。
なぜなら、安いからといって低出力のものを選ぶと、枚数が増えて設置架台コストが高くなるからです。
パネルのメーカー保証については、必須条件ではありません。
確かに、メーカー保証はあった方がいいです。
しかし、保証がなかったとしても、それほどマイナス要因ではありません。
なぜなら、メーカーそのものが無くなってしまう恐れもあるからです。
それよりも保険に入っておくことをお勧めします。
例えば、何年も経ってから太陽光パネルが故障したとします。
同じものが販売終了していた場合、同等品を手に入れるのに何倍もの金額がかかることもあります。
それがもし保険に入っていれば、同等品が高値であっても関係なく交換費用が補填されるのです。
2-2. パワコン(パワーコンディショナー)|120万円
パワコン(パワーコンディショナー)は、約120万円です。
ソーラーシェアリングの場合、地域活用要件を満たす必要があります。
具体的には、次の2点です。
【ソーラーシェアリングに必要な地域活用要件】
(1)停電時に、外部電源なしで発電を再開できること
(2)給電用コンセントがあり、災害時に活用できること
これらは2020年度より追加になった要件です。
このような条件を満たしたパワコンを選定してもらいましょう。
2-3. アルミ架台|120万円
架台は、約120万円です。
軽くて錆びないアルミ製が主流です。
パネルの組み方には、主に「さざ波式」と「アレイ式」があります。
「さざ波式」は、太陽光パネルを1枚ずつ配置します。
パネルの間隔を調整すれば、遮光率を自由に設定できるメリットがあります。
等間隔で設置するので、パネル下はある程度均一に日光が当たります。
ただし、間隔を広くすると、架台コストが割高になるデメリットがあります。
「アレイ式」は、太陽光パネルを何枚か組み合わせて一つのアレイを構成します。
アレイごとに隙間なくパネルを組んでいるので、「さざ波式」より架台コストは割安になります。
ただし、お互いに影にならないようアレイどうしの間隔を広くとる必要があります。
したがって、狭い農地には適しません。
また、アレイの下は日光がかなり遮られ、遮光率の調整ができません。
したがって、遮光率が高くても栽培できる作物にしか向きません。
あと、下部で農業することを想定して設計する必要があります。
農業機械を使うのであれば、その高さと走らせる方向を施工業者に伝えておきましょう。
縦横に走らせる必要はないにしても、一方向の稼働空間は確保すべきでしょう。
2-4. 工事費|180万円
工事費は、約180万円です。
主な工事として、架台組立、パネル取付、電気配線、試運転等があります。
ソーラーシェアリングは、野立て太陽光に比べて工事の難易度はあがります。
なぜなら太陽光パネルの取り付ける高さが2m以上になるからです。
重いパネルを2mの高さまで持ち上げて取り付けるのは、重労働で危険を伴います。
そういった面で安全性に実績のある施工業者を選びましょう。
なお、農地が道に接していない場合、工事費が高くなります。
接していたとしても大型トラックが通れない道幅だと運搬費が割高になります。
そのような点も含めて見積してもらいましょう。
2-5. 申請手続費用|80万円
申請手続費用は、少なくとも80万円程度は見込んでおきましょう。
主な内訳は、次のとおりです。
【ソーラーシェアリングの申請手続費用の内訳】
(1)電力会社手続 : 50~80万円(負担金含む)
(2)設備認定手続 : 10万円程度
(3)農業委員会手続 : 20~30万円
(1)電力会社手続
電気を売るための接続契約です。
負担金が発生したら40万円程(関西電力の場合)必要になるので、あらかじめ見込んでおきましょう。
電力への工事負担金の目安を知りたい方はこちら。
(2)設備認定手続
固定価格で20年間買い取ってもらえるようにする手続です。
経済産業省へ申請します。
(3)農業委員会手続
農地の一時転用手続です。
ソーラーシェアリングは、農地のまま太陽光設備を設置できます。
ただし、架台の支柱の部分のみ一時転用手続が必要です。
この手続きを行政書士などに依頼することになります。
他にも近隣の農家さんに承諾を頂くなどの手続きが必要です。
ご自分で動かれる限り直接の費用は発生しません。
ただし時間がかかることもありますので、ご注意ください。
2-6. オプション|農地条件・栽培作物によって様々
オプションには様々あり、農地の条件や栽培作物によって異なります。
主なオプションをご紹介します。
農地整備費用
荒廃農地で雑草が生い茂る場合、農地の状態に戻すのにもコストがかかります。
排水溝設置費用
水はけが悪い場合、排水を考えなければなりません。
事前に溝などを掘る作業が必要になります。
フェンス
安全を考えるならフェンスを設置します。
防草シート
耕作する場所以外は、雑草対策のために防草シートを張る場合があります。
監視モニター
発電をモニターするために、監視モニターのソフトを導入します。
コストはかかりますが、故障によって売電し損なうリスクは回避できます。
灌水装置
パネル下は雨もさえぎられるので、灌水装置が必要な場合があります。
井戸
自然雨でまかなえない場合は、井戸を掘ることもあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事では、次のことをご説明しました。
(1)ソーラーシェアリングの初期費用の目安
(2)最も発電効率が良く割安な施工事例
(3)必要な設備とその基礎知識
※農地500㎡(150坪・1反の半分)に設置した場合
ソーラーシェアリングを設置するのに、幾らぐらいかかるかの目安がたてられるようになったと思います。
高額な投資になりますので、慎重に検討したいところですよね。
あなたの農地に最適なソーラーシェアリングをたてる際の参考にして頂けたらと思います。
ソーラーシェアリングの基本的なことが知りたい方はこちら。